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パクリタキセルのオキセタン環をつくる酵素TOT1を解明 タバコでバッカチンIIIを生産

抗がん剤パクリタキセルの骨格のオキセタン環をつくる酵素を見つけ、タバコ植物で前駆体のバッカチンIIIを作った。

掲載誌
Science
論文発表
執筆
NBS編集部
パクリタキセルのオキセタン環をつくる酵素TOT1を解明 タバコでバッカチンIIIを生産

中国農業科学院深圳農業ゲノム研究所(Agricultural Genomics Institute at Shenzhen, CAAS)と北京大学の共同研究チームが、抗がん剤パクリタキセル(paclitaxel)の中核骨格であるバッカチンIII(baccatin III)をつくる酵素を新たに解明し、タバコ植物で経路を再構成した。パクリタキセルは、高度に酸化されたジテルペノイド(diterpenoid)骨格に側鎖が付いた構造で、半世紀近く研究されてきたが、骨格の生合成経路には空白が残っていた。

オキセタン環をつくる「二重機能P450」

研究チームは、イチイの一種であるTaxus maireiから、シトクロムP450(cytochrome P450)酵素のTOT1(taxane oxetanase 1)を見つけた。この酵素は、酸化的な転位反応により、パクリタキセル特有の4員環であるオキセタン(oxetane)をつくるもので、これまで知られていなかった環形成の機構である。また、タキシシン(taxusin)の生合成経路を活用したスクリーニング戦略で、タキサン骨格のC9位を酸化する酵素T9αH1も確認した。新たに見つけた酵素と既存の酵素を組み合わせて、タバコ(tobacco)でバッカチンIIIの生産経路を人工的に再構成した。

パクリタキセルは、イチイから得た原料や植物細胞の培養に頼って生産されてきた。骨格の経路がつながったことで、植物・微生物ベースの生産研究の出発点が整ったという意義がある。ただし今回の成果は、経路の再構成を実証した段階であり、生産収率や、側鎖まで付けたパクリタキセルの完全生合成は扱っていない。

この記事のポイント
  • Taxus maireiから、オキセタン環の形成酵素TOT1を解明し、新たな環形成の機構を提示
  • タキシシン経路に基づくスクリーニング法で、C9酸化酵素T9αH1を発見
  • タバコ植物で、バッカチンIIIの生産経路を人工的に再構成

研究の限界 経路の再構成の段階の研究であり、産業的な収率や、側鎖を含むパクリタキセルの全生合成は別の課題である。

原著論文

  1. Jiang B, et al. · Agricultural Genomics Institute at Shenzhen, Chinese Academy of Agricultural Sciences. Characterization and heterologous reconstitution of Taxus biosynthetic enzymes leading to baccatin III. Science. DOI: 10.1126/science.adj3484

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