天然物とは――二次代謝産物・植物抽出物研究の定義と方法論
天然物素材
天然物(natural products)とは、植物、微生物、菌類、海洋生物などの生物がつくり出す化合物とその抽出物を指します。研究の中心にあるのは、生物の成長に直接は必要ないものの、防御、シグナル伝達、環境への適応などに関わる二次代謝産物です。
天然物は、アルカロイド、テルペノイド、フェノール性化合物(フラボノイド・タンニン・リグナンなど)、ポリケタイド、ペプチドといった二次代謝産物から、多糖類などの一次代謝産物に由来する高分子まで、非常に多様な構造を持ち、医薬品や機能性素材の開発の重要な源として研究されてきました。
アルカロイドテルペノイドフラボノイドポリフェノールポリケタイド多糖類ペプチド
主な研究テーマ
- 01資源探索と基原の確認
研究対象生物の分類学的同定と、証拠標本(voucher specimen)の保管
- 02抽出と分離・精製
溶媒・条件による抽出効率の比較、クロマトグラフィーによる分離
- 03構造決定
分光学的分析による新規化合物の構造と立体化学の決定
- 04生合成と代謝工学
二次代謝産物の生合成経路の解明と、微生物を用いた生産
- 05海洋・微生物由来の天然物
海洋生物、共生微生物、菌類に由来する化合物の探索
- 06持続可能な資源利用
生物資源の保全と、名古屋議定書に基づく利用の機会と利益の配分
方法論の概観
01抽出
溶媒抽出や超臨界流体抽出などで成分を得ます。
02分画・分離
カラムクロマトグラフィーとHPLCで成分を分けます。
03活性追跡
生物検定の結果をたどって、活性のある画分を絞り込みます。
04構造決定
NMR、質量分析(MS)などで構造を決定します。
05プロファイリング
LC-MS・GC-MSによるメタボローム解析で成分組成を調べます。
参考文献
- Newman DJ, Cragg GM. Natural products as sources of new drugs over the nearly four decades from 01/1981 to 09/2019. J Nat Prod 2020;83(3):770–803.
- Atanasov AG, Zotchev SB, Dirsch VM, et al. Natural products in drug discovery: advances and opportunities. Nat Rev Drug Discov 2021;20:200–216.
- Convention on Biological Diversity. Nagoya Protocol on Access to Genetic Resources and the Fair and Equitable Sharing of Benefits Arising from their Utilization (2010, 2014年発効).