天然物・植物素材
食用シアノバクテリアの紫外線吸収物質「サクリピン」、生合成の最初の段階を担う酵素AsLOX2を解明
日本の名城大学の研究チームが、スイゼンジノリのリポキシゲナーゼがα-リノレン酸を酸化して、サクリピン生合成の入り口となる中間体をつくることを明らかにした。

日本の名城大学(Meijo University)の研究チームが、食用の淡水シアノバクテリア、アファノテーケ・サクルム(Aphanothece sacrum、和名スイゼンジノリ)がつくる紫外線吸収物質サクリピン(saclipin)AおよびBの、生合成の出発段階を担う酵素を見つけ出した。脂肪酸酸化酵素のリポキシゲナーゼ(lipoxygenase)AsLOX2が、α-リノレン酸(α-linolenic acid)の9位と16位の炭素に酸素を付加して、ヒドロペルオキシド中間体をつくることが要点である。論文はJournal of Natural Productsに掲載され、Phys.orgが報じた。
酵素を1つ見つけ、残りは化学で補った
研究チームは、シアノバクテリアのゲノムからリポキシゲナーゼの候補2つ(AsLOX1、AsLOX2)を選び、組換えタンパク質として作製して活性を比較した。AsLOX2はα-リノレン酸で最も高い活性を示し、最適条件では数分のうちに基質の80%以上を中間体に変換した。一方、AsLOX1は試験条件で活性が検出されなかった。中間体をサクリピンに変える酵素はまだ見つかっていないため、研究チームは、塩化スズ(SnCl2)による還元と二酸化マンガン(MnO2)による酸化という化学反応で、中間体をサクリピンAとB(約9対1)に変換し、実際の天然物と一致することを確認した。
サクリピンは、316〜319nm付近の紫外線を強く吸収し、天然由来の紫外線防御素材の候補として取り上げられてきた物質である。生合成の入り口を明らかにした今回の研究は、微生物の培養だけに頼らずにサクリピンを得る実験的な経路を示した点で意義がある。
ただし、経路の後半の酵素は未確認の状態であり、化学変換段階の収率は「高くない」とだけ報告されている。生産性・安全性・安定性の評価は行われておらず、化粧品などへの応用はまだ先の段階である。
- AsLOX2がα-リノレン酸のC9・C16を酸化し、サクリピン生合成の入り口となる中間体を生成
- 最適条件で数分以内に基質の80%以上を変換、AsLOX1は活性なし
- 中間体をSnCl2還元・MnO2酸化でサクリピンA・B(約9:1)に化学変換
研究の限界 経路後半の酵素は未確認で、化学変換の収率は低く、生産性・安全性の評価は行われていない。
原著論文
- Uchida Y, Taura D, Waditee-Sirisattha R, Kageyama H · Meijo University. Enzyme discovery opens a new route to natural UV-absorbing saclipins (論文: Lipoxygenase AsLOX2 Catalyzes the Gateway Oxygenation Step in the Biosynthesis of the UV-Absorbing Oxylipin Saclipin in the Edible Cyanobacterium Aphanothece sacrum). Journal of Natural Products. DOI: 10.1021/acs.jnatprod.6c00875
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