天然物・植物素材
沈黙していた遺伝子クラスターを目覚めさせて見つけた最小のグリコペプチド系抗生物質「ビファマイシンA」
環境中の放線菌の発現していなかった遺伝子クラスターを目覚めさせ、バンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌にも効く新たな抗生物質を得た。

英国のリーズ大学(University of Leeds)のアストバリー構造分子生物学センターとジョン・イネス・センター(John Innes Centre)などの研究チームが、新しいグリコペプチド系抗生物質(glycopeptide antibiotic、GPA)のビファマイシンA(biffamycin A)を発見し、生合成を分析した。臨床で使われる抗生物質の大半は細菌の天然物に由来するが、既知の物質が繰り返し再発見される問題から、産業界はこの資源を敬遠してきた。安価になったゲノム解読とバイオインフォマティクスのツールが、実験室では発現しない生合成経路を明らかにしたことで、再び関心が集まっている。
4つのアミノ酸からなる最小のGPA、初めて見る構成単位
研究チームは、環境から分離したストレプトマイセス・アルビドフラブス(Streptomyces albidoflavus)が持つ沈黙した生合成遺伝子クラスターの発現を工学的にオンにし、バイオインフォマティクスの予測を道しるべにして化合物を分離した。ビファマイシンAは、既知のGPAのうち最も小さいグリコテトラペプチド(glycotetrapeptide)で、5-クロロ-4-メトキシトリプトファンと、マンノースが結合した3-ヒドロキシ-D-リジンという、前例のない構成単位を持つ。マイコバクテリアとブドウ球菌に抗菌活性を示し、メチシリン・バンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌にも作用した。
バンコマイシンに代表されるGPA系列で、新たな骨格を確保したという意義がある。ただし、試験管内の抗菌活性の結果であり、動物の感染モデルでの有効性や毒性は確認されていない。

- 環境中の放線菌の沈黙した生合成遺伝子クラスターを工学的に発現
- 既知のGPAのうち最小のグリコテトラペプチド、前例のない構成単位2種
- メチシリン・バンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌とマイコバクテリアに活性
研究の限界 試験管内の抗菌試験の段階であり、動物やヒトでの有効性と安全性は検証されていない。
原著論文
- Brigham MW, et al. · University of Leeds. Discovery and Biosynthesis of the Novel Glycotetrapeptide Antibiotic Biffamycin A. Angewandte Chemie International Edition. DOI: 10.1002/anie.202511349
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