生命科学フロンティア
RNAで指定してヒトゲノムの93万塩基を丸ごと反転させた
RNAの案内でDNAを組み換えるブリッジ組換え酵素をヒトの細胞向けに改良し、20%の挿入と、メガベース級の逆位・欠失を実現した。

クリスパー(CRISPR)はDNAを切るのが得意だが、大きな断片を望みの位置に挿入したり、染色体の塊を反転させたりする作業は難しい。米国のアーク研究所とカリフォルニア大学バークレー校、東京大学の研究チームは、サイエンス(Science)に、RNAの案内でDNAをつなぎ合わせる「ブリッジ組換え酵素(bridge recombinase)」をヒトゲノム向けに改良した結果を報告した。
酵素とガイドRNAを同時に改良
研究チームは、細菌の可動性遺伝因子に由来する同族の酵素ISCro4を見いだし、ガイドRNA(ブリッジRNA)を合理的に再設計した。酵素そのものは、ディープミューテーショナルスキャニング(deep mutational scanning)で変異体を大量に評価して、性能を引き上げた。その結果、ヒトゲノムにDNAを挿入する効率は最大20%、ゲノム全体で意図した標的に作用した割合(特異性)は最大82%まで上がった。
さらに、同じ染色体の中で、最大93万塩基対(0.93メガベース)の区間を反転させたり切り取ったりすることに成功し、プラスミドでは、疾患と関連した調節領域や反復配列の伸長区間を除去する概念実証も行った。
限界
培養細胞とプラスミドのレベルの基礎研究であり、ヒトの治療に用いられた段階ではない。挿入効率20%と特異性82%は、最適な条件での上限値であり、意図しない再編成のリスクと、体内への送達の問題は残っている。
- 細菌由来のISCro4ブリッジ組換え酵素を、ヒトゲノム向けに再設計
- 挿入効率は最大20%、ゲノム全体での特異性は最大82%
- 同じ染色体内の最大0.93メガベースの区間の逆位・欠失を実現
研究の限界 培養細胞・プラスミドのレベルの基礎研究であり、示された効率・特異性は最適な条件での上限値である。
原著論文
- Perry NT, Bartie LJ, Katrekar D, … Hsu PD · Arc Institute・UC Berkeley(米国)、The University of Tokyo(日本). Megabase-scale human genome rearrangement with programmable bridge recombinases. Science. DOI: 10.1126/science.adz0276
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