天然物・植物素材
黄耆のサポニン、アストラガロサイドの生合成の全経路を解明…酵素6種を確認
黄耆のゲノムを解読して、アストラガロサイドIVを作る酵素6種を見つけ、ベンサミアナタバコで生産まで再現した。

2千年以上にわたって生薬として使われてきた黄耆(Astragalus membranaceus)の主要成分アストラガロサイド(astragaloside)が、植物の中で作られる全過程が明らかになった。中国科学院昆明植物研究所(Kunming Institute of Botany)と成都中医薬大学の研究チームは、黄耆の染色体レベルのゲノム(chromosome-level genome)を新たに組み立て、これをもとに生合成経路の全体を解明して、Nature Plantsに報告した。
遺伝子クラスターから見つけた酵素6種
研究チームはまず、アストラガロサイドの合成に不可欠な修飾酵素を2つ見つけ出し、これを手がかりにして、トリテルペノイドの生合成遺伝子クラスター(biosynthetic gene cluster)を確認した。経路は、選択的な水酸化、エポキシ化、糖の結合が順に起こる構造で、シトクロムP450(cytochrome P450)酵素3種、2-オキソグルタル酸依存性酸化酵素(2-ODD)1種、糖転移酵素(glycosyltransferase)2種が関与していた。これらの遺伝子をタバコの近縁種ニコチアナ・ベンサミアナ(Nicotiana benthamiana)に入れると、アストラガロサイドIVが作られた。
アストラガロサイドは、原料を安定して確保しにくいことが課題とされてきた。経路が確保されたことで、栽培に頼らない生産方式を設計する基盤ができ、植物のテルペン遺伝子クラスターの多様性についての理解も広がったというのが、研究チームの評価である。
ただし、今回の成果は、経路の解明と、実験用の植物での再現を示した段階であり、生産の収量や経済性は扱っていない。アストラガロサイドのヒトでの効果を検証した研究でもない。
- 黄耆の染色体レベルのゲノムを組み立てたうえで、トリテルペノイドの生合成遺伝子クラスターを確認
- P450が3種、2-ODDが1種、糖転移酵素が2種で、水酸化・エポキシ化・糖の結合を担当
- ニコチアナ・ベンサミアナで、アストラガロサイドIVの異種生産に成功
研究の限界 経路の解明と異種発現の段階の研究であり、工業的な収量やヒトでの効果は評価していない。
原著論文
- Xu B, et al. · Kunming Institute of Botany, Chinese Academy of Sciences. Total biosynthesis of the medicinal triterpenoid saponin astragalosides. Nature Plants. DOI: 10.1038/s41477-024-01827-4
原著論文の著作権は、各出版社および著者に帰属します。