生命科学フロンティア
タンパク質・DNA・薬を1つのモデルで、アルファフォールド3が複合体の構造を予測
拡散モデルに切り替えたアルファフォールド3が、タンパク質―リガンド、タンパク質―核酸の結合構造を、専用ツールより正確に言い当てた。

タンパク質1つの折りたたまれた形を言い当てる問題は、アルファフォールド2(AlphaFold 2)でかなり解決されたが、実際の生命現象は、タンパク質がDNA・RNA・低分子・金属イオンと噛み合うことで起こる。グーグル・ディープマインドとアイソモルフィック・ラボの研究チームは、これらの複合体を1つのニューラルネットワークでまとめて予測するアルファフォールド3(AlphaFold 3)を、ネイチャー(Nature)に報告した。
構造を「生成」する拡散モデルへ転換
アルファフォールド3は、従来の構造を大きく改め、画像生成に使われる拡散(diffusion)ベースのアーキテクチャを採用した。その結果、タンパク質、核酸、低分子リガンド、イオン、化学修飾された残基が混在する複合体の座標を、一度に出力する。著者らは、タンパク質―リガンドの結合では従来のドッキング(docking)プログラムより精度が大幅に高く、タンパク質―核酸の結合では核酸専用の予測器を上回り、抗体―抗原の予測もアルファフォールド・マルチマー2.3版より明確に改善したと報告した。
意義は、分子1つではなく「相互作用」を計算で扱えるようになったことである。受容体にどの化合物がどのような姿勢で入るのか、転写因子がDNAのどの溝をつかむのかを、実験の前に絞り込める。
予測は仮説、検証は実験
ただし、すべての結果は計算による予測であり、結合の強さや薬効を示すものではない。学習データの少ない分子の種類、柔軟に動く領域、まれな化学構造では誤差が大きくなる可能性があり、構造生物学の実験で確認する必要がある。
- タンパク質・核酸・低分子・イオン・修飾残基が混在する複合体を単一モデルで予測
- 拡散ベースのアーキテクチャに置き換え、タンパク質―リガンドの精度が従来のドッキングツールを大幅に上回る
- 抗体―抗原の予測精度もアルファフォールド・マルチマー2.3より改善
研究の限界 計算による予測結果であり、結合親和性や薬効を保証するものではなく、実験による検証が必要である。
原著論文
- Abramson J, Adler J, Dunger J, … Jumper JM · Google DeepMind・Isomorphic Labs(英国). Accurate structure prediction of biomolecular interactions with AlphaFold 3. Nature. DOI: 10.1038/s41586-024-07487-w
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