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インスリン抵抗性の筋肉のシグナル1万2千個を追跡…運動がシグナルを「予熱」

男性19人の筋生検114件を解析し、インスリンの作用を調節する新しいタンパク質MINDY1を特定した。

掲載誌
Cell Metabolism
論文発表
執筆
NBS編集部
インスリン抵抗性の筋肉のシグナル1万2千個を追跡…運動がシグナルを「予熱」

2型糖尿病に先立って現れるインスリン抵抗性(insulin resistance)が、筋細胞内のシグナル伝達をどう変えるかを精密に描いた研究が、『Cell Metabolism』に掲載された。オーストラリアのシドニー大学(University of Sydney)チャールズ・パーキンス・センターの研究チームは、運動がこの欠陥を一部補う経路も、あわせて示した。

生検114件、リン酸化ペプチド1万2千個余り

研究チームは、インスリン抵抗性のある男性とインスリン感受性のある男性、計19人が、運動とインスリン注入に反応している間に、骨格筋(skeletal muscle)の生検114件を採取した。それぞれの生検から、タンパク質のリン酸化状態を示すリン酸化ペプチド(phosphopeptide)を1万2000個以上定量する、リン酸化プロテオミクス(phosphoproteomics)解析を行った。

インスリン抵抗性は、シグナル全体が均一に弱まるのではなく、特定の経路と時点で選択的にずれる様相を示した。インスリンが誘導するmTORC1シグナルと、非典型(non-canonical)なシグナル反応が、特に減っていた。一方、事前に運動をすると、インスリン抵抗性のある人でも、インスリンの注入前にシグナルの一部が先にオンになる「プライミング(priming)」が起こり、インスリン感受性がよくなった。そのうち、MINDY1タンパク質の441番のセリン部位は、AKT酵素の基質であることが確認され、マウスの筋細胞でMINDY1を減らすと、インスリン刺激によるブドウ糖の取り込みが増えた。

メカニズムの地図、治療標的までは距離がある

筋肉のインスリン抵抗性でのシグナルの変化を、ヒトの組織で直接描いた点が意義である。ただし、参加者は男性19人と少なく、女性は含まれていない。MINDY1の機能の検証は、マウスの培養筋細胞での実験にとどまっており、ヒトの体でも同じ役割を果たすかどうかは、さらなる確認が必要である。

この記事のポイント
  • インスリン抵抗性・感受性のある男性19人の骨格筋生検114件から、リン酸化ペプチド1万2000個余りを定量
  • インスリン抵抗性は、mTORC1などの特定のシグナルを選択的に弱める
  • 事前の運動がインスリンシグナルを先にオンにし、MINDY1を抑えるとマウスの筋細胞のブドウ糖の取り込みが増加

研究の限界 男性19人の小規模な研究であり、MINDY1の機能はマウスの培養細胞でのみ検証された。

原著論文

  1. Needham EJ, et al. · University of Sydney (Charles Perkins Centre). Personalized phosphoproteomics of skeletal muscle insulin resistance and exercise links MINDY1 to insulin action. Cell Metabolism. DOI: 10.1016/j.cmet.2024.10.020

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