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MRSAの感受性を回復させるカビの天然物スピロアスペルトリオンAを初めて全合成

密な多環骨格のため合成されていなかったメロテルペノイドを、ジビニルシクロプロパン転位により完成させた。

掲載誌
Science
論文発表
執筆
NBS編集部
MRSAの感受性を回復させるカビの天然物スピロアスペルトリオンAを初めて全合成

ドイツのコンスタンツ大学(University of Konstanz)と中国の上海中医薬大学の生理活性分子合成研究センター(BiMoS)の研究チームが、天然物(−)-スピロアスペルトリオンA(spiroaspertrione A)の不斉全合成(enantioselective total synthesis)を報告した。アスペルギルス(Aspergillus)のカビの培養物から分離された、アンジコニン(andiconin)系列のメロテルペノイド(meroterpenoid)で、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)が既存の抗生物質に再び反応するようにする候補として挙げられてきた。先の分離研究では、オキサシリン(oxacillin)のMRSAに対する最小発育阻止濃度を、最大32分の1に下げたと報告されている。

ディールス・アルダー反応のあと、重要な転位でかご型骨格に

官能基が密に並んだ多環骨格が、長い間、合成の障害になってきた。研究チームは、立体選択的なディールス・アルダー(Diels-Alder)環化付加から出発したのち、ジビニルシクロプロパン転位(divinylcyclopropane rearrangement)で、スピロビシクロ[3.2.2]ノナンの中核骨格をつくった。この転位が可逆的であることを確認し、密度汎関数理論(DFT)計算で分析した。続いて、小さくて堅いかご型の構造に後半の官能基化を適用して天然物を完成させ、類似の天然物(−)-アスペルメロジオンとの生合成上の関連の可能性も示した。

合成経路が確保されたことで、構造を変えた誘導体をつくって活性を比較する道が開けた。ただし、今回の論文の焦点は合成の方法論であり、耐性を回復させる効果の機序や、動物・ヒトでの有効性は、別途の検証が必要である。

この記事のポイント
  • 合成が難しかったアンジコニン系列のメロテルペノイドの不斉全合成
  • ジビニルシクロプロパン転位でスピロビシクロ[3.2.2]ノナン骨格を構築
  • 転位の可逆性をDFTで分析、アスペルメロジオンとの生合成上の関連性を提示

研究の限界 合成の方法論の研究であり、MRSAの耐性を回復させる効果は、試験管レベルの報告にとどまっている。

原著論文

  1. Huang W, et al. · University of Konstanz. The total synthesis of (−)-spiroaspertrione A: A divinylcyclopropane rearrangement approach. Science. DOI: 10.1126/science.adz7593

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