自然から、生命と医学の最前線へ。

メニュー

生命科学フロンティア

タンパク質言語モデルが作った蛍光タンパク質、自然界のものとの類似は58%のみ

配列・構造・機能をあわせて扱う生成型タンパク質モデルが、既存の蛍光タンパク質とかけ離れた新しいタンパク質を設計し、実際に光らせた。

掲載誌
Science
論文発表
執筆
NBS編集部
タンパク質言語モデルが作った蛍光タンパク質、自然界のものとの類似は58%のみ

タンパク質の配列は、数十億年の進化が残した一種の文章とみなせる。米国のエボリューショナリースケール(EvolutionaryScale)とアーク研究所(Arc Institute)の研究チームは、サイエンス(Science)誌に、この文章を学習した生成型言語モデルESM3を報告し、自然界にない機能性タンパク質を実際に作り出したと発表した。

配列・構造・機能を1つのモデルで扱う

ESM3は、アミノ酸配列だけでなく、3次元構造や機能のアノテーションも同じモデルの中で扱う、マルチモーダル(multimodal)な生成モデルである。ユーザーが「この構造を保ちながら、こんな機能を持て」というように複数の条件を組み合わせて指示すると、それに合う配列を生成し、追加のアライメント(alignment)学習によって、指示への従順度を高めることができる。

研究チームは、蛍光タンパク質を作るよう指示したうえで、生成された候補を合成して試験した。その結果、既知の蛍光タンパク質との配列一致度がわずか58%、つまり系統的に遠く離れた明るい蛍光タンパク質が得られた。著者らは、自然の進化でこれほどの距離を開けるには、約5億年かかると推定した。

限界

「5億年」という数字は、自然の配列間の距離から換算した推定値であり、成功例は、合成・試験した候補のうちの一部である。蛍光という、比較的測定しやすい機能で得られた結果であるため、酵素活性や治療用タンパク質に一般化するには、さらに多くの検証が必要である。

この記事のポイント
  • 配列・構造・機能をあわせて入力・生成するマルチモーダルなタンパク質言語モデルESM3
  • 既知の蛍光タンパク質との配列一致度が58%の新しい蛍光タンパク質を、合成して検証
  • 著者らは、この距離を自然の進化の約5億年に相当すると推定

研究の限界 「5億年」という数値は配列間の距離に基づく推定値であり、成功した設計は、合成・試験した候補のうちの一部である。

原著論文

  1. Hayes T, Rao R, Akin H, … Rives A · EvolutionaryScale・Arc Institute(米国). Simulating 500 million years of evolution with a language model. Science. DOI: 10.1126/science.ads0018

原著論文を読む ↗

原著論文の著作権は、各出版社および著者に帰属します。

  • #タンパク質設計
  • #言語モデル
  • #合成生物学
  • #蛍光タンパク質