生命科学フロンティア
腸内細菌をセンサーに改造し、腸の浸透圧の変化を読み取った
共生細菌のバクテロイデスに遺伝子回路を組み込み、下痢モデルのマウスの腸の浸透圧の上昇を、蛍光で長期間報告させた。

腸の中では、酸性度・酸素・浸透圧が絶えず変化し、この変化が微生物の構成や疾患に影響を与える。しかし、腸を開かずにこうした環境を調べる手段は少なかった。カナダのブリティッシュコロンビア大学の研究チームは、セル(Cell)に、腸にすむ細菌そのものを測定装置に変える合成生物学のツールを報告した。
共生細菌用の遺伝子部品を新たに整備した
対象は、ヒトの腸に多く、遺伝子操作が比較的容易なバクテロイデス・テタイオタオミクロン(Bacteroides thetaiotaomicron)である。研究チームは、発現量を調節できる抑制型プロモーター、抑制因子の活性をDNAレベルで調節する装置、モジュール型の蛍光転写レポーター回路、そしてプラスミドを染色体に組み込む別の方式の統合経路という、4種類の部品をつくった。
これらの部品を組み合わせて、吸収不良により腸の浸透圧が上がる状況を感知するバイオセンサーを設計し、試験管と、下剤で浸透圧性の下痢を誘導したマウスモデルで、動作を確認した。細菌1個レベルの蛍光シグナルで、腸の浸透圧の状態を、長期間、非侵襲的に報告することができた。
限界
マウスモデルと試験管での検証の段階であり、ヒトの腸での安全性・安定性は確認されていない。遺伝子組換えの細菌をヒトに投与する問題については、別途の規制上の判断が必要である。
この記事のポイント
- バクテロイデス・テタイオタオミクロン用の抑制型プロモーター・レポーター回路など、遺伝子部品4種を開発
- 吸収不良による腸の浸透圧の上昇を感知するバイオセンサーを設計
- 下剤で誘導した浸透圧性下痢のマウスモデルで、単一細胞の蛍光により長期の非侵襲的測定
研究の限界 マウスモデル・試験管レベルの結果であり、ヒトの腸での安全性や、遺伝子組換え細菌の投与に関する規制上の検討は行われていない。
原著論文
- McCallum G, Burckhardt JC, He J, … Tropini C · University of British Columbia(カナダ). A Bacteroides synthetic biology toolkit to build an in vivo malabsorption biosensor. Cell. DOI: 10.1016/j.cell.2025.12.052
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