生命科学フロンティア
赤ちゃんの腸内細菌、父親も供給源 1年後の寄与は母親と同程度
乳児81人の腸内微生物のゲノムを追跡したところ、父親由来の菌株が分娩方法にかかわらず着実に受け渡されていた。

新生児の腸内微生物は主に母親から受け継がれ、帝王切開や分娩中の抗生物質投与は、この受け渡しを一部断ち切る。イタリアのトレント大学とフィンランドのヘルシンキ大学の研究チームは、その空白を誰が埋めるのかを調べた結果を、セル・ホスト&マイクローブ(Cell Host & Microbe)に報告した。
2つのコホートを菌株単位で追跡
研究チームは、2つの縦断メタゲノム(metagenomic)データを解析した。1つは乳児74人・試料398件のコホート、もう1つは帝王切開で生まれ、母親の糞便微生物移植(FMT)を受けた乳児7人・試料35件である。種(species)ではなく菌株(strain)単位で誰から来たかを追跡し、同じ種でもどの家族から渡ってきたのかを区別した点が核心である。
その結果、父親は分娩方法にかかわらず菌株を着実に供給する安定した供給源であり、累積の寄与度は1年が経つと母親と同程度の水準に達した。帝王切開の乳児に母親のFMTを行った場合は、母子間の菌株の共有が増え、定着した細菌の平均増殖速度が上がる一方で、病原性細菌の定着は減った。
限界
観察コホートの解析であるため因果を断定できず、FMTを受けた乳児は7人とごく少ない。FMTは研究環境での処置であり、一般的な推奨事項ではない。
この記事のポイント
- 乳児74人・試料398件と、FMTを受けた乳児7人・試料35件を菌株単位で追跡
- 父親は分娩方法とは無関係の安定した菌株供給源で、累積寄与度は1年後に母親と同程度
- 母親のFMTは母子間の菌株共有と細菌の増殖速度を高め、病原性細菌の定着を減少
研究の限界 観察コホートの解析であり因果を断定できず、FMTの対象乳児は7人にすぎない研究環境での処置である。
原著論文
- Dubois L, Valles-Colomer M, Ponsero A, … de Vos WM · University of Trento(イタリア)・University of Helsinki(フィンランド). Paternal and induced gut microbiota seeding complement mother-to-infant transmission. Cell Host & Microbe. DOI: 10.1016/j.chom.2024.05.004
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