代謝・老化
838人・47組織を解析…ミトコンドリアの突然変異は2種類の老化時計
細胞の入れ替わりが多い組織ではランダムな突然変異が、心臓や脳では特定の位置の突然変異が、年齢とともに蓄積した。

ミトコンドリアゲノムに蓄積する突然変異が、組織の種類によって異なる方式の分子時計として働くとの解析結果が、『Nature Aging』に掲載された。中国科学院上海栄養健康研究所(Shanghai Institute of Nutrition and Health)の研究チームによる成果である。
GTExドナー838人のミトコンドリアRNAを解析
研究チームは、米国のGTEx(Genotype-Tissue Expression)プロジェクトで、20~70歳のドナー838人の47組織のRNAデータを用いて、ミトコンドリアの体細胞変異を探した。その結果、加齢とともに、一部の細胞で生じた変異が広がるクローナルモザイク(clonal mosaicism)が急速に増えており、そのパターンは大きく2つに分かれた。
消化管や皮膚のように細胞が絶えず入れ替わる組織では、複製の過程でのランダムな誤りが蓄積し、クローンの拡大が加速していた。研究チームは、これが加齢に伴う腫瘍や機能低下への脆弱性に関係しうると見ている。一方、心臓や脳のようにほとんど分裂しない組織では、組織ごとに決まったホットスポットの位置に変異が繰り返し蓄積した。これは、高いエネルギー需要とミトコンドリアの入れ替わりが残した累積的な負担を反映していると解釈された。
組織ごとの老化への脆弱性の地図を示した意義はあるが、死後に提供された組織をある一時点で解析した横断研究であり、1人の人の変化を時間を追って調べたものではない。これらの変異が老化を引き起こす原因なのかどうかは、別の検証が必要である。

- GTExドナー838人(20~70歳)の47組織のRNAから、ミトコンドリアの体細胞変異を解析
- 消化管・皮膚など分裂する組織では、ランダムな変異の蓄積とクローンの拡大が加速
- 心臓・脳など分裂しない組織では、組織ごとのホットスポットに変異が繰り返し蓄積するという二重構造
研究の限界 死後に提供された組織の横断解析であり、個人内の時間的な変化や因果関係は確認されていない。
原著論文
- Wang Z, et al. · Shanghai Institute of Nutrition and Health, Chinese Academy of Sciences. Mitochondrial clonal mosaicism encodes a biphasic molecular clock of aging. Nature Aging. DOI: 10.1038/s43587-025-00890-6
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